設計・製図技術も時代とともに変化してきました。手描きの図面が2D-CAD図面に代わり、今では3D-CAD設計も珍しくなくなりました。

世の中の全てのモノにはメリット・デメリットがあるように、CADも例外ではありません。

『CAD』が設計をするのではなく、人が『CAD』と言う設計をするための道具(ツール)を使用して設計をします。

株式会社坂本設計技術開発研究所では、2DーCADと3DーCADを使用し、知恵・工夫・発想力を持って金型設計を行っています。

2D設計と3D設計とは

2D(2 Dimension)は空間の次元が2であり、縦と横しかない平面の世界です。 紙に描いた図や絵などはすべて2Dに分類されます。

3D(3 Dimension)は3つの次元で表された空間で、縦・横・高さ(奥行き)のある世界です。私達が生活しているこの世界で、触ることができるモノは3Dです。

2Dで説明した、「紙に描いた図や絵」の『描いた図や絵』などは2Dで、『紙』は3Dです。

2D設計は手描きの図面と2D-CADを使用した設計で、3D設計は3D-CADを使用した設計です。

 

株式会社坂本設計技術開発研究所で使用しているCADはこちら

CADの発展

モノづくりに携わる人にとって認知度の高い「CAD」は「Computer Aided Design」の略で、「キャド」と呼びます。日本語では「コンピュータ設計支援」と訳されています。自動車や飛行機、住宅や建築、冷蔵庫やスマートフォン、服飾など身の回りにある数多くの製品は、すべて図面を基に作られています。CADはその図面の設計や製図を支援するシステムソフトです。

代表の坂本が企業した1978年の設計は、手描きの図面と聞いています。私が入社した1998年には、既に2D-CAD設計になっていたので、CAD開発・販売は、この間ぐらいで行われていたと思っていました。

しかし、CADの歴史はもっと古く、1963年に2次元CADソフト「Sketchpad」が誕生したことで始まったようです。でも、「誕生」がこの年なら「開発」はそれより前ですよね。そして、1970年代には3次元CADソフト「CATIA」の開発が開始されたとのことです。

驚きました。!感心しました。!半世紀以上前の人達が思い描いた技術が、PCの技術などの発展と相俟って世界のモノづくりを支援し、更に進化し続けようとしている!素晴らしいです!

興味のある方は「CADの歴史」などで検索してみてください。面白いですよ。

 

設計・製図技術

CADの発展により設計・製図の技術はとても変化しました。手描き図面、2DーCAD図面、3D-CAD図面、それぞれの特徴(メリット・デメリット)やプレス金型設計を通じて設計者として感じることがあります。三者とも優劣を付け難いですね。

手描き図面

手書き図面は何と言っても「味」があるんです。鉛筆によって描かれる線種には強弱や太く・細くなどの表現があり、設計者が伝えたい事が迷いの無い鉛筆使いでしっかりと描かれています。「ここは現合(げんごう:現場で判断して調整してください)でね」の場合はそこそこの指示で描かれています。構造が分からない、または不安がある場合は描くことができません。

また、手描き図面の場合は、線の描き方の練習と図面用の文字の練習があるため、手描き図面の心得がある人の文字はとても読み易く、書道とは違う奇麗さがあります。

自動車用プレス金型の図面のサイズはA4~A0、A0のロング版(A0の短手841㎜×MAX2500㎜)で、株式会社坂本設計技術開発研究所には特注幅2500㎜のドラフター2台とA0サイズ2台が、現在でも検図台として鎮座しています。手描き図面には大きなドラフターと定規類(直定規、三角定規、T定規、曲線定規、自在曲線定規、精度の良い高級な定規です)、テンプレート、鉛筆やシャーペン(シャープペンシル)、烏口(からすぐち:均一な太さの線をひくための製図道具)、コンパス、消しゴム、消し板、羽根箒 などの製図器具を使用します。図面の内容によっては数台のドラフターを用いて設計します。

ドラフターを使用しての設計は、ほぼ立ち仕事です。背が低い人や女性にとっては厳しい仕事ですね。

紙は普通紙、トレーシングペーパー、和紙などを使用していました。紙は湿度で伸びたり、うねったりします。湿度の多い時期は、「前日に描いた線が数ミリ伸びてしまっている!」なんてことはざらです。なので、紙の保管庫には「水とりぞうさん」が必須アイテムです。

手描き図面での設計のプロフェショナルは、「図面用紙に基準線を描いたら、50%図面を描き終えている」と言うことです。どういう意味かと言うと、手描きの図面では、図面用紙に描いたモノを、簡単に位置の移動することができないので、設計者は金型構造を頭の中でイメージし、どのように配置・図示するかを決めたうえで必要な図面用紙のサイズを用意し、一番最初に下型・上型・複数の断面の基準線を図面に描くそうです。  凄いですね。新人には真似ができませんね。

2DーCAD設計

CADで設計することの利点はやはり、「コピー」と「ペースト」で、図面内はもちろん図面間でも可能ですから万能です。おまけに「移動」も楽です。そして、計算機能があるので周長や面積、角度計算などを電卓を使用して自分で計算しなくても良いし、パラメーター機能などを使用した効率化も図れます。

「削除」「アンドゥ(直前の操作を取り消して元の状態に戻すこと)」機能などが修正作業を助けてくれますが、寸法のごまかしが利かないので指示寸法によっては調整を必要とします。また、手描き図面と異なり製品形状はデータ(正確な形状線)を使用していることと、自動車の形状が曲線であることから、鋼材の寸法取りを間違えることも少なくありません。(手描き図面での製品形状には正確さが求めていられないので、鋼材取りも余裕を見ています)

設計された内容(構造や指示の仕方など)を観ると一目瞭然ですが、パッと見は線や文字が奇麗なのでしっかりと設計されている(良く考えつくされている)図面に思えます。しかし、「コピー」と「ペースト」が簡単なために起こってしまう「成り立っていない図面」になることもあります。また、CADを用いた設計では、手描き図面のように線や寸法に気持ちを乗せることができないので、設計者が伝えたい大事なところなどを表現する工夫(技術)が必要です。

自動車用プレス金型設計での手描き図面と2D-CAD図面は、「三角法」を守って設計します。製図のルールを守って、線種を使い分けたり寸法を入れたりします。様々な設計ルールを守らないといけませんが、2次元の図面で一番難しいのは「3Dの頭を持つ」ことではないでしょうか? しかし、「3Dの頭を持つ」ことができれば、先輩方の話していることを理解することができ、設計の世界がぐんと拡がります。

 

===「3Dの頭を持つ」ためのやり方は人それぞれですが、私の練習方法をご紹介します。===

◆3D形状を2D図にする(スケッチや三面図で表現)

私はよく、現場で金型の構造を部分的にピックアップし、スケッチ(図化)したりして頭に入れていました。スケッチしている時に、疑問に感じたことを作業者に質問したり、逆に、作業者から製作時の注意ポイントや現場の要望などを教えてもらいました。

◆2D図面から3D形状を製作する(ペーパークラフトですね)

私はよく、加工要領図の設計の手伝いをしていました。当時、株式会社坂本設計技術開発研究所は「NC切削加工機」を所有しておらず、「工程検討用モデル」を製作することができなかったので、製品図面をコピーし、切り貼りして製品形状を3次元化していました。この作業は、複雑な三面図を読み取る力や、各メーカーの表記の仕方など、色々なことに気付き、学ぶ機会にもなりました。

◆言葉から3D形状をイメージし2D図にする

取引先担当者との電話内容や打合せ内容をメモする際に、言葉だけでなく2D図を追加して記録すると時間が経った後でも見つけ易いです。打合せの場合では、担当者との理解の速さと正確な一致にもつながります。

3D-CAD設計

賢く良くできたソフトにはよくあることですが、そのソフトの仕組み(世界観と言うか考え方)を理解するのに時間が掛かります。最初は操作を覚えるというよりも、ソフトの世界観に翻弄されている感じですね。

できることが多いからか?賢く構造が複雑だからか?計算時間に時間が掛かったり、勝手に落ちたり(ソフトが不具合などの原因で動作しなくなったり、異常終了すること)もします。

上記の2点により、少し(結構かな?)イラっと来る私がいますが、「ソフトの世界観を深く理解できていないうえに、的確な指示(操作)ができていない私が悪い」と自分を諭して、3D-CADと付き合っています。

しかし、やはり賢く良くできたソフトはできることが多いです。立体形状を観ながらの設計は形状の把握が容易で、鋼材の寸法取りも正確です。また、重量の算出も容易で正確です。そして、設定次第では、設計中に使用している部品をピックアップし、員数表(部品表、PartsList)を作成することも可能です。

3D-CAD設計では、立体物として金型を設計するため、2D図面のように「平面図と断面図での絵の不一致」などは起こりません。これは大変助かります。また、立体形状の把握が容易なことから、新人への説明にも一役買います。しかし、2D図面のように断面(断面:設計する上で構造を決定したポイントを図示している)が無いので、金型構造を設計する上での設計者の意図やメッセージが読み取りにくく、検図方法にも工夫が必要です。

3D-CAD設計で作成されたデータは、設計後の後工程である鋳物手配用や金型切削用のNCデータ作成・NC加工データとして利用可能です。これは金型製作現場にとって、とても嬉しいことではないでしょうか? NC加工が主流となっている金型製作現場では、2D図面の場合には「2D図面を3D化する」という作業があります。これは図面を読む技術が必要ですし、「平面図と断面図での絵の不一致」がある場合とても苦戦します。3D-CAD設計のデータを使用すれば、かなりのショートカットが可能です。

          

いかがでしたか? 以前、現行の金型図面(図面データが無く2D図面しか存在しない)に改造するための設計をするという依頼が来た際に、久しぶりにドラフターが起こされて、経験者3名が設計をしている姿を見ました。手描き図面の設計を経験していない私にとって、とても新鮮で、何故か嬉しかったです。そして、2D-CAD・3D-CADを使って設計ができ、設計を通して工夫力を発見・発揮できるこの環境がとても楽しいです。

  

株式会社坂本設計技術開発研究所では、プレス金型設計の様々なご依頼に対応いたします。

また、自動車用プレス金型設計以外の色々な設計も承っております。お気軽にご相談ください。

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【担当:松本(マツモト)】